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2010年9月10日、屋久杉の巨樹・翁杉(おきなすぎ)が、倒れているのが見つかりました。この杉は推定樹齢2000年。樹高は23.7メートル、幹回り12.6メートル。枯死していない屋久杉では縄文杉の16.4メートルに次ぐ第2番目の太さでした。
 直径でいえば4メートルもある巨木ですので、断面はちょうど8畳間がすっぽりと入ってしまうほどの巨大さだということです。
 標高約1000メートル地点の縄文杉登山道沿いにそびえ、樹皮には深いしわのような陰影を刻み、表面の苔むした姿は樹齢を印象づけるには十分な迫力があり、堂々とした姿は誰もが知る存在感ある屋久杉でした。
 確認に行った人によると、高さ約3メートルの部分から折れ、登山道とは反対の沢側の斜面に倒れ、多くは粉々に砕けた破片となってしまいました。
 倒れた原因は分かりませんが、もともと頂部は枯れて損なわれており、幹部の断面の90%は腐食して空洞化していたため、上部20メートルの重さに耐えきれなかったものと推測されます。
 9月の倒木以降、九州営林局屋久島森林管理署では有識者を交えた会議で対応の協議を重ね、翁杉が登山者の安全を見守るとする山岳信仰の観点から、腐朽した幹を運び出さずに現地に残すことにしました。
 そして登山者向けの解説看板を近くに設置し、倒木後の森の再生を数十年かけてモニタリングするとしています。
 永年愛されてきた老木である翁杉。
 惜しまれる方も多いこととは思いますが、私は屋久島の原生林の中では、こういったことが常に繰り返されており、これこそ自然そのもの、生態系の姿であることを思えば今回の対処法は最善の策であるととらえています。
 
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